2016 年 28 巻 3 号 p. 179-185
本邦で関節リウマチ(RA)治療にMTXが承認されて16年,生物学的製剤が導入されて12年が経過した.当初は医師側も最終手段として用いていたこれらの薬剤は,早期診断早期治療,T2Tの概念にのっとって早期から用いられるようになり,いまや標準治療のひとつである.薬剤の強力な炎症抑制効果により,これまで困難であった滑膜炎の沈静化がかなりの確率で可能になり,以前はよく見られた著明な四肢関節のアライメント異常,巨大骨欠損などは少なくなってきた.欧米ではすでにリウマチ手術件数は減少傾向にあり,特に人工関節手術は減少傾向にある.また,RAに罹患してから手術療法をうけるまでの期間も延長していることが報告されている.しかし,薬剤不応の難治例や,合併症のため十分薬物投与ができない例は関節破壊が経年的に進行することが多く,また,罹病期間が長くすでに関節破壊があり滑膜炎は沈静化してもOA変化が進行する例などはやはり,人工関節手術が必要となる.一方,炎症が良好にコントロールされ大関節破壊が生じにくくなった結果,活動性滑膜炎のない変形した足趾関節,手指関節は手術件数が増加傾向にあり,足趾関節に対しては従来の切除関節形成術に代わって関節温存手術が広まりつつある.少数箇所残った滑膜炎関節に対しては,一時は長期間効果が望めない理由ですたれた滑膜切除術が,薬物コントロールにより長期成績が期待され,見直されてきている.