2016 年 28 巻 3 号 p. 186-196
目的:メソトレキサート(MTX)8mg/週以下で効果不十分な108例の関節リウマチ(RA)症例に対し,8mg/週をこえる増量(9~16mg/週)を行った症例の,1年間におけるRA活動性,機能,画像的検討,安全性評価を後方視的に検討した.
方法:RA活動性評価としてDAS28-ESRを,機能的評価としてmHAQを,画像的評価はmodified total Sharp score (mTSS)を用いて評価し,発現した有害事象(AE)とその予測因子を検討した.
結果:MTXの増量によりDAS28-ESRは増量前4.3±1.4より12か月時3.4±1.5と活動性は有意に改善し(P<0.0001),低疾患性活動性と寛解の合計は増量前24例(22.2%)から12か月時40例(47.6%)と有意に増加した(P<0.001).機能評価として,mHAQは増量前0.69±0.65から12か月時0.55±0.68へ有意に減少した(P<0.01).画像的評価による関節破壊年間進行度(ΔmTSS/Y)は8.2±12.1から1.02±2.35へ有意に低下し(P<0.01),構造的寛解(ΔmTSS/Y≦0.5)を48例(57.1%)に認めた.安全性評価は,肝機能異常,発熱,嘔吐,肺炎,帯状疱疹などのAEが48例(44.4%)61件に新規発現し,中止例は2例であった.AEの予測因子として増量前の体重が少ないほど(P=0.001),MMP-3が低いほど(P=0.026),最大MTX投与量が多いほど(P=0.031)高率に発症した.重篤なAEは8例で,死亡例はなく,65歳以上(p=0.02),DMARDs併用群(P<0.001)で有意に多かった.
結論:MTXは8mg/週をこえる増量により臨床的改善,機能的改善,関節破壊抑制効果が示された.しかし,AEの頻度も高く認められることからリスク・ベネフィットを考慮して使用すべきである.