臨床リウマチ
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誌上ワークショップ 膠原病の難治性病変
難治性ループス腎炎
廣村 桂樹諏訪 絢也池内 秀和
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2018 年 30 巻 3 号 p. 215-223

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抄録

目的:活動性増殖性ループス腎炎(ISN/RPS分類 III, IV型)では,シクロホスファミド間歇静注療法(IVCY)やミコフェノール酸モフェチル(MMF)の使用により腎予後の改善が得られてきた.しかし末期腎不全に至る難治例はまだ存在する.LNの腎予後とそのリスク因子ならびに新規治療法の現状について検討する.

結果:国内の幾つかの施設から各レジストリを用いた解析より,腎予後不良因子が示されている.我々の教室のレジストリからは,腎生検時の血清Cr高値,増殖性病変と膜性病変の合併(混合型),急性病変と慢性病変の混在(A/C)が腎予後不良因子であった.腎予後の改善のためには,寛解導入療法により寛解に導くことが重要である.しかしMMFとIVCYを比較した代表的なALMS試験においても,半年後の完全奏功率は十分とは言えない.そこでMMFやIVCYをベース薬として生物製剤を併用する臨床試験が行われてきた.しかし今のところベース薬を上回る成績は得られていない.一方,MMFとカルシニューリン阻害薬の併用療法(マルチターゲット療法)が有用であるとの報告が増えつつある.当教室の検討でもMMFとタクロリムスの併用療法は高い寛解率を示し,また寛解維持に有用であった.

結論:マルチターゲット療法は有用な治療法と思われるが,長期有効性や安全性の検討がさらに必要である.またB細胞をターゲットとした生物製剤の臨床試験は現在も引き続き行われており,新たな治療選択肢が加わることを期待したい.

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© 2018 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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