2019 年 31 巻 1 号 p. 48-54
概念:1985年にMcCartyらは,高齢で急性発症の左右対称性の多発(腱鞘)滑膜炎と手足の背側の浮腫を認める,RS3PE症候群という疾患概念を提唱した.
病因・病態:血清Vascular endothelial growth factor(VEGF)濃度の著明な増加が認められ,関節局所の血流増加に関与しているものと考えられる.
検査所見:赤血球沈降速度の亢進,CRPの高値を認めるが,リウマトイド因子,抗CCP抗体は陰性である.血清MMP-3濃度が著明に増加する.特に悪性腫瘍を合併した症例の血清MMP-3濃度は高値を示す.手関節の造影MRI検査では,手関節,MCP関節,PIP関節の腱滑膜炎と血流増加を認める.関節超音波検査においても,MRI同様,腱鞘滑膜炎および皮下浮腫の所見が認められる.関節X線画像上変形がないことが,RAとの鑑別に有用である.
悪性腫瘍の合併:本疾患は胃癌,大腸癌,肺癌,乳癌,前立腺癌などの腺癌の合併が多いことが明らかになっている.
治療:通常プレドニゾロン10~15mg/日の内服で開始する.初期投与量を投与する.通常,ステロイド薬に対する反応は劇的で1~2週以内に寛解に至る.