2019 年 31 巻 4 号 p. 336-342
骨は運動器としてだけでなく,造血幹細胞や免疫前駆細胞の分化・維持の場を提供する免疫組織の役目も果たす.さらに骨と免疫系は,サイトカインや受容体など多くの制御因子を共有し,不可分な関係を築いている.骨と免疫系の相互作用や共通制御機構に関する研究は骨免疫学と称され,主に関節リウマチの病態研究を中心に発展してきた.TNFファミリーサイトカインのRANKLは破骨細胞分化だけでなく,リンパ節や胸腺などの免疫組織形成にも必須の機能を果たし,まさに骨と免疫の共有因子の代表格に相当する.一方,RANKLの過剰な活性化は破骨細胞亢進により,関節リウマチの骨破壊や閉経後骨粗鬆症,がん骨転移に伴う骨病変など引き起こす.現在ヒト型抗RANKLモノクーナル抗体はこうした骨量減少疾患の治療薬として用いられている.またRANKLは膜結合型タンパク質として発現する他,細胞外領域でタンパク質分解酵素により切断を受け可溶型タンパク質として産生される.これまで,可溶型RANKLと膜型RANKLの生体内での役割の違いが不明であったが,最近我々は可溶型RANKLを選択的に欠損させたマウスを作製し,可溶型RANKLの生理学意義及び病理学意義を明らかにした.本稿ではRANKLの骨免疫学的機能を概説するとともに,がん骨転移における可溶型RANKLの特異機能について最新の研究成果を紹介する.