臨床リウマチ
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総説
Tietze症候群:リウマチ性疾患と鑑別が必要な骨格症
中村 正
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2020 年 32 巻 4 号 p. 260-268

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抄録

 胸痛はありふれた症候で,いわゆるTietze領域に痛みを指で指し示すことができる範囲に腫脹と圧痛を認めればTietze症候群を疑う.一般に,第2・3胸肋関節や肋軟骨あるいは胸鎖関節などの領域に限局した疼痛と腫脹を伴う良性疾患の非化膿性病態で,原因は不明である.同部位の圧痛を来たす疾患の一群に,関節リウマチ,強直性脊椎炎,反応性関節炎,乾癬性関節炎などの脊椎関節炎,SAPHO症候群などのリウマチ性疾患がある.現状ではTietze症候群は独立した疾患とは考えにくく,ある種の全身性疾患や局所性疾患の異質な病態のひとつであるか,または特定の疾患の進行過程の一変化である可能性が高い.従って,リウマチ性疾患に関連したTietze症候群様病態への注意深い検討が望まれる.さらに,これらのリウマチ性疾患の炎症病態における標的分子が明らかになりつつあり,Tietze症候群の治療において分子標的薬の治療選択肢が広がる可能性がある.リウマチ性疾患を鑑別診断する過程でTietze症候群の再認識が求められ,今後の更なる症例集積や病態生理の解明が期待される.

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© 2020 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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