2020 年 32 巻 4 号 p. 269-274
投与前T-SPOT陰性にもかかわらず,肺結核を発症した関節リウマチ(RA)の一例を経験した.84歳 男性.初診時RA歴2年.SDAI13.0.MTX6.0mgより開始し,12mgまで増量する.腎機能低下を懸念し漸減すると疾患活動性活発化し,SDAI最大36.4まで上昇するため,初診後4か月にてバリシチニブ4mg開始となる.開始前スクリーニングにてT-SPOT陰性,胸部CTでは軽度の間質性変化あるも咳や喀痰排出はなかった.開始後疾患活動性は速やかに沈静化,開始後6週でSDAI寛解に至る.5か月後,全身倦怠感を訴える.胸部CTにて肺結核の所見,喀痰にてガフキー5号にて抗結核治療を開始.治療開始後は喀痰排出無くなる.バリシチニブは中止となり,プレドニゾロン7.5mgにてSDAI寛解維持出来ており,喀痰排出はない.バリシチニブ投与時は,特に高齢患者に対してはT-SPOTが陰性でも肺結核発症に細心の注意を払う必要がある.