2023 年 35 巻 4 号 p. 195-204
新規の腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor: TNF)阻害薬であるオゾラリズマブは,重鎖抗体の可変領域(variable domain of heavy chain of heavy chain antibody: VHH)を利用したVHH抗体医薬であり,2022年9月に国内で関節リウマチを適応症として承認された.オゾラリズマブは抗ヒトTNFα-VHHと抗ヒト血清アルブミン-VHHからなる3価の二重特異性抗体であり,分子量は38kDaで従来のIgG抗体の約1/4である.このような低分子化と血清アルブミンとの結合能により,皮下投与後,速やかに体循環へ吸収され,炎症組織への効率的な分布が期待される.実際に,オゾラリズマブはコラーゲン誘導関節炎モデルマウスにて,IgG型のTNF阻害薬と比較して,速やかな循環血への移行および炎症を起こした関節組織への分布が確認された.また,メトトレキサート併用下にてオゾラリズマブ30mgを皮下投与した臨床試験では,投与3日目に臨床症状の改善が認められ,52週まで持続的な有効性が確認された.以上のことから,オゾラリズマブは臨床症状の速やかな改善が期待できる新しいタイプのTNF阻害薬であると考えられる.