危機管理研究
Online ISSN : 2434-6225
Print ISSN : 0919-245X
台湾中小企業におけるレジリエンスの考察
新型コロナウイルス危機を通して
謝凱雯謝凱雯
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2023 年 31 巻 p. 23-31

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抄録
 COVID-19は世界中で大流行し,いまだに収束する見込みがない。ロックダウンなどで消費が落ち込み,多くの企業が不況に苦しみ,経済活動は大幅に縮んでいる。このようにこのウイルスは世界経済に多大な影響をもたらしているが,台湾の製造業への影響は短期的なものに留まり,迅速な回復を遂げ,正常な操業状態に戻っている。COVID-19の不況を乗り切ったのは,IT や半導体産業の巨大企業だけでなく,台湾経済を幅広く支える中小企業も同様だ。  本研究は台湾の中小製造業を対象として,COVID-19は企業家にどのような影響を与えているのか,つまり企業家はこの危機をどのように認知し,どのような対応をしたのか,この一連の企業家活動を考察する。具体的には,先行研究を踏まえて3社の企業家に聞き取り調査を行い,不確実な状況で企業家はどのようなレジリエンスを発揮し,パンデミックな危機を克服しようとしたのかを明らかにした。  研究結果は以下の4点に集約できる。まず ① 企業家は危機に直面した時,自社に利益をもたらさない投資を素早く止め,撤退という判断ができた。次に ② 企業家は臨機応変に状況変化に対応することができ,最善の解を導き出す問題解決力があった。そして ③ 企業家は自身の人的ネットワークを活用し,他者と相互補完関係に基づいた分業メカニズムを生み出すことができた。最後に,④ 企業家の成長意欲や成長志向が強かったため,危機を乗り越えることができた。
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© 2023 日本危機管理学会
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