抄録
21世紀の複合危機は、急速に拡大するDX(Digital Transformation)、複雑に変動するデリスキングと経
済安全保障、加えて陸海空、宇宙新技術と情報比重の飛躍的増大、地球規模の自然災害と新興再興感染症
による根源的様相の不明瞭など、簡潔なオントロジー(危機の情報を組織化する構造)による対応が困難
となっている。本稿は、藤塚、森(1943)により「孫子の組織」として指摘された、危機的環境下、組織
の存続を確実にする法則と利害衝突を防止する枠組みを論究する。第4形篇と第10地形篇を藤塚・森の結
合方式に従い読み進め、全体の脈絡と意味を理解する構造を孫子の組織と呼び、仮説「軍争篇を中心に対
称配置された両篇の呼応関係、孫子全体の重層的脈絡と循環的推論の論理的解釈から、兵は国の大事、死
生の地、存亡の道が浮かび上がる構造がある」を検証する。本研究は「孫子の組織」を伝統的又は経済的
安全保障、近い将来、危機管理GPT(Generative Pre-trained Transformer)による戦略形成を予見し、国
家と企業の危機管理の理論的発展と仮説構築に役立てることを目的とする。