文化資源学
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研究報告
エルマン・デルスニスによる両大戦間における日本での展覧会活動
中川 三千代
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2018 年 16 巻 p. 35-52

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抄録

本稿では、フランス人美術商エルマン・デルスニス(Herman d’Oelsnitz)が日本で開催した展覧会活動について論じる。デルスニスは1922年から1931年まで、ほぼ毎年の仏蘭西現代美術展覧会と、その他大小さまざまな展覧会を開催した。更に1934年から3年間は、作品斡旋という形でフランス絵画を日本に紹介した。これら全期間を対象としてデルスニスの活動を明らかにする。まずデルスニスの関与した展覧会を分類整理する。その上で、主要な展覧会の実施体制、出品内容、入場者数などについて考察する。更に、三越、大阪朝日新聞社、国民美術協会の協力について考察し、展覧会を継続可能にした要因を論じる。1931年までの展覧会活動を3つの時期に区分し、その後の活動を加えて4つの時期区分とする。具体的にはデルスニスが個人で企画し、政府や美術団体の協力を得て開催した時期を初期とし、1924年設立の日仏芸術社を拠点として活動を拡大し、美術月刊誌『日仏芸術』の発行も併せて行った時期を中期とし、それ以降、日仏芸術社の閉鎖までを後期とする。更に、デルスニスの活動終了までを晩期とする。時期区分に従い仏展などの展覧会について特徴をまとめる。特に1934年にデルスニスの活動が復活できた要因として、教育機関、美術団体に属する多くの日仏芸術社時代の協力者との人的関係の重要性を明らかにする。本稿はデルスニスの展覧会活動について通観し、デルスニスと日仏芸術社が日本でのフランス美術普及に果たした役割を見直す基礎を与えると考える。

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