2025 年 23 巻 p. 1-21
本論文は、19世紀末から20世紀初頭に活躍したイタリア出身の彫刻家、メダルド・ロッソ(1858-1928)の彫刻写真に焦点を当て、「彼の彫刻写真がいかなる文化資源的価値を有し、現代においてどのように保存・活用されるべきか」を考察したものである。
この考察にあたって、展覧会カタログや批評文献の精査、デジタルアーカイブ調査、写真技法分析、現地取材を通じて、ロッソの彫刻写真を歴史的文脈、技法と視覚的効果、現代における保存・活用という三つの視点から分析した。ロッソは写真を単なる記録媒体としてではなく、撮影後の加工やトリミング、露光の調整を通じて、視覚を操作するメディアとして活用した。特に、ガラスネガやプリントへの物理的な介入、再撮影・再印刷の反復といった独自の技法を確立し、作品の解釈を形成した。
研究の結果、ロッソの彫刻写真は以下の四つの重要な文化資源的価値を持つことが明らかになった。①撮影後の操作技法の革新性や物質性・非物質性の探求という技法的価値、②彫刻と写真の融合による視覚体験の再構築という表現的価値、③19世紀末から20世紀初頭の写真・彫刻史における先駆的位置づけという歴史的価値、④制作プロセスの記録や技法実験の痕跡というアーカイブ的価値である。
現代における保存・活用の課題としては、写真の正確な点数や内容把握の不完全性、技法や材料に関する記録の不足、経済的制約による保存環境整備の遅れが指摘された。また、デジタルアーカイブ化においては、写真における物質の特性の再現や、真正性の問題が浮上している。
本研究は、ロッソの彫刻写真を文化資源学的視点から分析し、その多面的な価値を明らかにするとともに、現代における保存・活用の課題と可能性を提示した点で意義がある。今後はより包括的な研究をおこない、ロッソの彫刻写真を適切に評価することで、その芸術的意義をより広く社会に発信し、研究の発展に寄与したいと考える。