2011 年 22 巻 3 号 p. 3_13-3_26
本研究では,鉄筋腐食を生じたRC梁部材の残存耐力および破壊性状に及ぼす定着性能の影響を評価した。鉄筋腐食が比較的均一に生じたRC梁部材では,せん断領域における付着応力の低下に伴い主鉄筋の定着領域まで鉄筋を介して荷重が伝達された。この場合,鉄筋腐食により主鉄筋の定着不良が生じていると,設計せん断耐力に比べて,極めて低い荷重レベルで鉄筋の抜出しによる脆性破壊が生じる。定着領域に配筋された補強筋(定着筋)は端部からの鉄筋の抜出しを抑制し,アーチ耐荷機構の形成により,残存耐力の低下を抑制することが明らかになった。さらに,ナットとプレートを用いて主鉄筋端部を固定した場合では,残存耐力の低下は大幅に抑制され,主鉄筋の定着性能が残存耐力性状に極めて大きな影響を及ぼすことが明らかになった。