抄録
本研究では,実構造物から採取した3シリーズの腐食鉄筋の断面積分布の調査結果をもとに,解析における微小区間の長さを変動因子とした力学特性の解析を行った。その結果,微小区間の長さは,特に降伏以降の変形性能に大きく影響し,2d(dは鉄筋径)程度の区間長さでの最小断面積を用いれば,おおむね実験結果と同じ応力-歪関係を得ることができることを確認した。さらに,応力-歪関係の解析結果をバイリニア型モデルで単純化し,モデルの特性値を評価した。その結果,引張強度および降伏強度は最小断面積の健全鉄筋に対する減少率に応じて低下し,降伏歪の低下の程度はそれより緩やかであった。バイリニア型モデルの2次勾配は,減少率の増加にともなって増大し,終局歪(引張強度時の歪)は大きく減少した。