2017 年 28 巻 p. 93-101
プレキャストコンクリートの耐久性を照査するためには,蒸気養生を施したコンクリート中への塩化物イオンの浸透性を定量化することが重要である。しかし,蒸気養生コンクリートの塩化物イオン浸透性に関する研究はほとんど行われていない。本研究では,プレキャストコンクリート(断面厚200mm以下)を模擬した蒸気養生コンクリートと,現場打ちコンクリートを模擬した封かん養生コンクリートの塩化物イオン分布を暴露試験によって把握し,塩化物イオンの拡散係数をもとに塩化物イオン浸透性を検討した。その結果,蒸気養生コンクリートなどの二次養生中に水分が減少または不足したと考えられるコンクリートほど,水分供給が期待できる環境へ暴露した場合,暴露材齢の進行に伴って塩化物イオンの拡散係数が次第に低下することを明らかにした。データ数も少なく,試験体の寸法ならびに暴露試験前の養生条件も一般的な1ケースのみと限定される中での結果ではあるが,プレキャストコンクリートの拡散係数は,現場打ちコンクリートと同程度であることを示した。