汎用的なディスプレイと色フィルタを用いることで,非単色光刺激による条件等色実験を実現し,観測者個人の錐体分光感度を推定する手法を提案した.提案手法においては,生理学的に妥当な視覚モデルで錐体分光感度関数を定義し,複数種類の参照刺激に対する等色データに対して,差分進化法を用いて分光感度を推定した.実測したディスプレイの分光放射輝度や色フィルタの分光透過率などの実際的な分光データを用いてシミュレーション実験を行い手法の実効性と有効性を検証した.シミュレーション実験の結果から,分光透過率の異なる3 種類以上の色フィルタを用いた等色を複数回繰り返し,その平均結果に対して差分進化法を適用することで高精度に分光感度が推定できることを確認した.さらに,実際の等色実験では観測者の色弁別閾によって等色にばらつきが生じるため,等色のばらつきと推定精度の関係についても検討し,提案手法の頑健性を確認した.