2024 年 2 巻 1 号 p. 13-26
化粧施術においてメイクデザインの構築は,相手の顔の目視による観察と印象分析に基づいて行われる重要なプロセスである.熟練した目視による印象分析技能は,適切なメイクデザインの構築と施術方法の選択に繋がる.本研究では,化粧施術を生業とする熟練したメイクアップアーティスト(熟練者) と修学中の初学者による印象分析時の視線に着目した.そして,20代女性と50代女性の素肌の顔画像を見る熟練者と初学者の視線の計測を行った.計測結果に対して,化粧施術において重要な顔の部位に関心領域(AOI)を設定して,それぞれの注視割合を算出した.この結果から熟練したメイクアップアーティストと修学中の初学者の注視パターンに異なる部分があることが示唆された.また,選択する化粧品類のタイプや色に関して違いがある結果となり,考察を行った.本研究で得られた結果を基にメイクアップアーティストのような熟練者の技能を伝達可能な形で形式化し,タブレット端末等で専門教育現場同様の学習が可能な自習システムを構築することが今後の課題である.