白背景に有彩色2色で描いた水彩効果刺激を用いた実験により,使用色の組み合わせを適切に設定することにより内側輪郭線内部の白色知覚が向上することが報告されている.本研究では,水彩効果を用いた白色知覚への影響を考察する上で,無彩色の水彩効果刺激を用いた一対比較法での実験を行い,刺激の輝度(明るさ)からの検討を行った.本実験では,灰色背景に5段階の異なる無彩色のうちの2色での水彩効果刺激対を呈示し,内側輪郭線内部の明るさ評価を求め,明るさ知覚へ与える影響,及びその要因を検討した.10名の評価者を用いた実験の結果,無彩色の水彩効果刺激を用いて明るさ知覚を向上させることが可能であること,及び評価傾向が評価者間で2つのタイプに分かれることが確認された.その要因として,内外輪郭線の輝度値との関係,内側輪郭線・外側輪郭線と背景の明度差との関係が示唆された.
化粧施術においてメイクデザインの構築は,相手の顔の目視による観察と印象分析に基づいて行われる重要なプロセスである.熟練した目視による印象分析技能は,適切なメイクデザインの構築と施術方法の選択に繋がる.本研究では,化粧施術を生業とする熟練したメイクアップアーティスト(熟練者) と修学中の初学者による印象分析時の視線に着目した.そして,20代女性と50代女性の素肌の顔画像を見る熟練者と初学者の視線の計測を行った.計測結果に対して,化粧施術において重要な顔の部位に関心領域(AOI)を設定して,それぞれの注視割合を算出した.この結果から熟練したメイクアップアーティストと修学中の初学者の注視パターンに異なる部分があることが示唆された.また,選択する化粧品類のタイプや色に関して違いがある結果となり,考察を行った.本研究で得られた結果を基にメイクアップアーティストのような熟練者の技能を伝達可能な形で形式化し,タブレット端末等で専門教育現場同様の学習が可能な自習システムを構築することが今後の課題である.
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