学校における図画工作や美術の授業における色の学びは,3色覚の色の見えが基準となるため,「色覚異常」の児童生徒に困難を生むことが懸念される.本研究では,図画工作や美術の授業で行われる色彩教育の内容,「色覚異常」の児童生徒に対する教師の認識や対応等に関する実態把握を通し,色覚多様性の概念に基づき色表現を教育するための課題と,その解消に向けた研究主題を示すことを目的とした.そのため,図画工作や美術の授業に携わる教師を主な対象としてアンケート調査を行い,210名から回答を得た.結果,1)教師に対する色知覚や「色覚異常」,色覚多様性の学習機会の保証と教材開発,2)色覚多様性の概念に基づいた図画工作や美術の教育指針づくり,3)一人ひとりが持つ色の世界に基づく表現を尊重した評価指標の作成,4)小学生でも色覚多様性の概念を経験的に学習できる教育プログラム,ツール開発という4つの主題を示した.各研究主題への取り組みは,今後の課題である.