日本色彩学会論文誌
Online ISSN : 2436-7451
2 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
特集:視覚情報とその応用
  • 太田 響介, 田中 緑, 堀内 隆彦
    原稿種別: 原著論文
    2024 年2 巻2 号 p. 27-39
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー

     本論文は,物体に照射する照明をシーン照明と定義し,撮影された画像内のシーン照明の色温度と照度の変化が,無彩色物体の光沢感知覚と硬さ感知覚に及ぼす影響について解析した.特徴的な材質からなる質感チャートを色温度3種(3000 K, 4000 K, 5000 K)と照度3種(500 lx, 750 lx, 1000 lx)を組み合わせた9種類の照明環境下で撮影し,撮影された画像を用いてシーン照明が光沢感知覚と硬さ感知覚に与える影響を解析するための心理物理実験を行った.心理物理実験の結果,シーン照明の照度が色温度によらず光沢感知覚に影響を与え,色温度が照度によらず硬さ感知覚に影響を与える結果が示唆された.得られた主観的な評価値と,画像から算出される画像特徴量との関係を回帰分析によってモデル構築した結果,光沢感と硬さ感についてどちらも高い精度でのモデル構築が可能であり,特に硬さ感のモデルが色温度の推定誤差に対して頑強であることが確認された.

  • 大津 昌也, 田中 緑, 堀内 隆彦
    原稿種別: 原著論文
    2024 年2 巻2 号 p. 40-54
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2024/10/10
    ジャーナル フリー

     近年,ipRGCが視知覚に与える影響に関する研究が進められている.著者らの先行研究では,分光プロジェクタを用いた視覚実験を通じて,ipRGCが中心視の色弁別に与える影響を解析し,ipRGCに与える刺激量の差が大きいほど,ipRGCが中心視の色弁別に影響を与えることを示した.一方,従来研究より,ipRGCは中心窩から少し離れたところに存在し,また黄斑色素などの影響を排除するためにも,周辺視環境下における検証が求められていた.本研究では,先行研究で実施したメタマー刺激対を用いた色弁別評価実験を周辺視環境で行うことによって,ipRGCが周辺視の色弁別に与える影響を考察することを目的とする.実験は,「ペンタミックメタマー刺激対」を用いた実験により,あらかじめ標準観測者の感度とのずれが少ない被験者を選出した上で,「メタメリックipRGC刺激対」を用いた色弁別評価実験を行った.実験の結果,錐体と桿体の刺激量を一定にした条件下でipRGC刺激量のみを増加させた時,弁別率が上昇する被験者が複数確認された.ただし,見えの違いが明るさに起因するいう観察者と,色に起因するという観察者がおり,弁別の手掛かりを特定することは困難であった.

  • 教師へのアンケート調査による実態把握と研究主題の提示
    村谷 つかさ, 主税 礼菜, 須長 正治
    原稿種別: 原著論文
    2024 年2 巻2 号 p. 55-68
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー

     学校における図画工作や美術の授業における色の学びは,3色覚の色の見えが基準となるため,「色覚異常」の児童生徒に困難を生むことが懸念される.本研究では,図画工作や美術の授業で行われる色彩教育の内容,「色覚異常」の児童生徒に対する教師の認識や対応等に関する実態把握を通し,色覚多様性の概念に基づき色表現を教育するための課題と,その解消に向けた研究主題を示すことを目的とした.そのため,図画工作や美術の授業に携わる教師を主な対象としてアンケート調査を行い,210名から回答を得た.結果,1)教師に対する色知覚や「色覚異常」,色覚多様性の学習機会の保証と教材開発,2)色覚多様性の概念に基づいた図画工作や美術の教育指針づくり,3)一人ひとりが持つ色の世界に基づく表現を尊重した評価指標の作成,4)小学生でも色覚多様性の概念を経験的に学習できる教育プログラム,ツール開発という4つの主題を示した.各研究主題への取り組みは,今後の課題である.

  • 姫野 佳乃, 石道 峰典
    原稿種別: 原著論文
    2024 年2 巻2 号 p. 69-77
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2024/10/10
    ジャーナル フリー

     ヒトにおける利き目と非利き目の色識別能力の違いや両目の色識別に及ぼす影響などについては不明瞭である.そこで本研究では利き目と非利き目が両目の色識別能力に及ぼす影響を検討した.本研究では,正常色覚者30名に対しFamsworth-Munsell (FM) 100 hue testにより両名,右目,左目の色識別能力を測定した.またMiles法により利き目の判定を行った.その結果,FM 100 hue testの結果において利き目と非利き目との間に統計的有意差は認められなかった.一方で,重回帰分析の結果,利き目とは異なり非利き目は両目の色識別能力に対しFM 100 hue testの全ての分析項目において有意な影響度を示した(それぞれp<0.01).本研究では,利き目と非利き目の色識別能の明確な違いを見出すことはできなかった.一方で,色識別において両目に対し非利き目の影響力が高い可能性が示唆された.

  • グルメサイトの焼き肉店の内装写真を例に
    田中 遼晟, 高橋 直己, 大内 紀知
    原稿種別: 原著論文
    2024 年2 巻2 号 p. 78-91
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2024/10/10
    ジャーナル フリー

     グルメサイト等のユーザー生成メディアでは飲食店とユーザーが投稿した写真が混在する.それらの各写真から感じる印象は一定ではないにも関わらず,ユーザーが良い印象を感じる写真とそうでない写真が同じ飲食店のものとして同時に呈示されたとき,それら全体に感じる印象は明らかでない.印象が異なる要素が組み合わさって形成される全体の印象を分析する従来研究は各要素が全体の印象に及ぼす影響を調べているのみで,画像が組み合わさって生じる全体の色彩特性が及ぼす影響を考慮した研究はない.そこで本研究では組み合わさった画像全体の印象を,画素値に基づく画像間の色彩類似度と各画像の印象で説明する.その結果,組み合わさっている各画像の高級感の平均値が高いときは画像間の色彩類似度が,中程度のときは高級感の高い画像の影響が強いことが分かった.本研究の貢献は,複数の画像が同時に呈示されるというありふれた,かつこれまで研究されてこなかった状況に注目し,印象に影響を与える要因を定量的に分析した点である.

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