抄録
イネの生殖生長期における耐塩性の品種間差異を検討するため, 耐塩性および感受性品種を含む6品種を土壌にNaClを混合して栽培し, その生育と収量構成要素の変化を調査した.その結果, どの品種でもNaCl処理濃度が高くなるに従って1株籾重が低下したが, その低下は感受性品種IR28と日本の品種日本晴, アケノホシおよびアケボノでは1株穂数, 1穂籾数および1籾重の低下に, 一方, 耐塩性品種IR4595-4-1-13(IR4595)とKala-Rata 1-24(KR1)では, 主に1株穂数と1籾重の低下に起因していた.また, 耐塩性品種では, どの葉位でも比較的低いNa含有率を示したが, 感受性品種と日本の品種では, 幼穂形成期の活動中心葉と考えられる葉位のNa含有率が特に高く, 1穂籾数との間に負の相関関係が認められた.特にIR28ではNa含有率の増加に対する1穂籾数の低下が顕著であった.他方, 第I節間のNa含有率と1籾重の間にも負の相関関係が認められ, IR4595とKR1では高NaCl濃度処理で第I節間のNa含有率が高まり易いことが認められた.