抄録
水稲種子に過酸化石灰を粉衣して湛水土壌中に直播し、出芽率を高める方法が実用化されている。この原理は、発芽種子に必要な酸素を過酸化石灰が供給することによると説明されてきたが、萩原素之は種子近傍の土壌環境に着目し、上記粉衣剤は発芽時における土壌の局所的還元を抑制・遅延するのが主効果であるとした。なお、彼は滅菌土壌中では種子に粉衣しなくとも良好な出芽を認めた(石川農業短大特別報告20、1993)。演者らは、過酸化石灰に各種薬剤を混合して水稲種子に粉衣し、湛水土中に埋没して出芽率に及ぼす効果を検討した。その結果、滅菌効果の期待できる硼酸と酸素ならびに無機栄養源としての硝酸苦土に良好な効果のあることを認めた。