日本作物学会中国支部研究集録
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気候温暖化にともなう島根県の水稲蒸発散量の変化予測
足立 文彦
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1997 年 38 巻 p. 1-6

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抄録
将来的に予想される気候温暖化によって, 水田蒸発散量がどのように変化するのか, また, 現在のイネ収量水準を維持するためには, さらにどの程度の水量が必要であるのかは明らかでない.そこで, 本報告では, 島根県において平均気温が平年値よりも1℃から5℃まで上昇した場合の水田蒸発散量の変化を推定した.島根県における過去10年間の稲作期間中の降水量とPenman法により推定した蒸発散量とを月別に比較したところ, 降水量に比べ蒸発散量が大きい8月に水不足が生じる危険性が最も高かった.これらデータをもとに外挿した稲作期間中の推定蒸発散量は, 平年値に比較して, 1℃の気温上昇では3%, 3℃では8%, 5℃では14%増加し, 気温平年値でも最大60mm程度の水が不足する可能性があると推定された。島根県下のイネの平年収量(476gm^<-2>)を温暖化した気候条件下で収穫するのに必要な水量(蒸発散量)を, 収穫指数, 蒸散/蒸発散比, 島根県下水田で求められた飽差補正水利用効率及び推定飽差により計算した.気温平年値では, 少なくとも413mmの水が必要であり, 1℃の気温上昇によって459mm(気温平年時の1.11倍), 3℃では555mm(1.34倍), 5℃では682mm(1.65倍)の水がさらに必要であると試算され, 特に現在でも水不足が生じやすい中山間地域の水資源確保が今後極めて重要になると考えられた.
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© 1997 日本作物学会中国支部
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