抄録
昭和30年代以降化学肥料・農薬の施用が日常化し, 作物以外の動植物群集密度を低く抑えることによって, 生産性の向上が図られてきた.しかし, 化学肥料・農薬の施用は水田生態系の生物・微生物相に大きな撹乱を及ぼしており, 生態系の多様性は失われ, 特定の病害虫の大発生を招くことも危惧されている.演者の所属する研究室では, 有機質肥料と農薬の施用の有無を組み合わせた試験区を設定し, 平成2年以降9年間, 水稲の有機栽培を継続している.これまで, 水田生態系を構成する動植物相について調査してきた.本報告では過去9年間の収量と雑草・害虫の発生状況を概略するとともに, 実肥の施用が有機栽培米の食味に及ぼす影響について検討を行った.