比較都市史研究
Online ISSN : 2424-0885
Print ISSN : 0287-1637
論文
16世紀後半における帝国都市ウルムの宗派化
―ルター派移行期の教会規律をめぐって―
岩倉 依子
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2019 年 38 巻 p. 44-65

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抄録

近世ヨーロッパにおける宗派化は、国家と教会によって推進され、この過程で社会の各方面で規律化が進められた。この点に関連して考察の対象となってきたのが教会規律である。本稿は、16 世紀後半にツヴィングリ派からルター派に移行したウルムで、教会規律が宗派化に果たした意義を考察する。ウルムの宗派化は、教会に対し、教会統治権を独占する市当局の主導で進められ、教会規律による宗教的処罰は市当局による世俗的処罰と化し、本来教会が独自に行使すべき「鍵の権能(罪を罰し赦す権限)」を教会は行使しえなかった。しかしウルムの教会は、ルター派特有の儀式である個人告解を義務化することによって、この権限を再び獲得し、教会独自の、神学的規範に基づく規律化を目指した。ウルムの宗派化においては、国家統制主義的特徴をもつ社会的規律化と、教会規律による宗教的規律化を区別して捉えるべきであり、宗派化における非国家的側面にも注目すべきである。

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© 2019 比較都市史研究会
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