比較都市史研究
Online ISSN : 2424-0885
Print ISSN : 0287-1637
38 巻
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フォーラム
例会報告要旨
論文
  • ―後期中世イタリア都市における神秘体験者・崇敬・表象―
    白川 太郎
    2019 年 38 巻 p. 17-43
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2020/02/21
    ジャーナル フリー
    後期中世の北中部イタリアには、数多くのカリスマ的な神秘体験者が出現し、生前から「聖人」とみなされた。本稿はマルゲリータ・ダ・コルトーナ(Margherita da Cortona, 1247-1297)を取り上げ、彼女に対する地域的な聖人崇敬の形成過程を分析する。マルゲリータは都市コルトーナの贖罪者であり、公然たる日常的な神秘体験によって、生前から「聖人」とみなされていた。彼女に対する死後の崇敬を推進したのは、都市共同体の霊的一体性創出・統治体制の正統化を目指すコルトーナの都市政府であった。しかし神秘体験の主観的・内面的性質のため、マルゲリータの「聖性」には常に疑念がつきまとった。彼女の生涯を描く伝記は、この疑念に対する応答として執筆されている。本稿が検討した事例は、後期中世における托鉢修道会のヘゲモニーおよび聖人伝のイデオロギー性を強調する従来の研究に対し、アクターおよび枠組としての都市の再評価を促すものである。
  • ―ルター派移行期の教会規律をめぐって―
    岩倉 依子
    2019 年 38 巻 p. 44-65
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2020/02/21
    ジャーナル フリー
    近世ヨーロッパにおける宗派化は、国家と教会によって推進され、この過程で社会の各方面で規律化が進められた。この点に関連して考察の対象となってきたのが教会規律である。本稿は、16 世紀後半にツヴィングリ派からルター派に移行したウルムで、教会規律が宗派化に果たした意義を考察する。ウルムの宗派化は、教会に対し、教会統治権を独占する市当局の主導で進められ、教会規律による宗教的処罰は市当局による世俗的処罰と化し、本来教会が独自に行使すべき「鍵の権能(罪を罰し赦す権限)」を教会は行使しえなかった。しかしウルムの教会は、ルター派特有の儀式である個人告解を義務化することによって、この権限を再び獲得し、教会独自の、神学的規範に基づく規律化を目指した。ウルムの宗派化においては、国家統制主義的特徴をもつ社会的規律化と、教会規律による宗教的規律化を区別して捉えるべきであり、宗派化における非国家的側面にも注目すべきである。
  • ―チェルシー給水事業会社の経営分析―
    唐澤 達之
    2019 年 38 巻 p. 66-87
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2020/02/21
    ジャーナル フリー
    近世ロンドンにおいて、給水事業は都市自治体から私的な事業会社の手に委ねられていった。本稿は、この給水システムの転換の意義と、そこから浮かび上がってくるロンドンの都市社会の水問題への対応のあり方の特質を検討することを課題とする。この課題に取り組むために、18世紀ロンドンの一給水事業会社であるチェルシー給水事業会社を取り上げ、当社の理事会議事録と会計記録を主たる史料として、給水システムの転換を可能にした種々の要因(資本の調達、労働力の調達、技術革新、市場、経営組織、諸ステークホルダー間の関係)がいかに相互に有機的に結びつけられたのかを実証的に明らかにした。そして、当社の給水事業には、ウェストミンスタの富裕層が主たる出資者及び経営者となって自らが居住する地区における都市開発や雇用創出による社会的安定を目指す、というローカルで共同体的な利害が反映されていたことが重要な論点として導かれる。
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