比較都市史研究
Online ISSN : 2424-0885
Print ISSN : 0287-1637
論文
18世紀ロンドンの給水事業
―チェルシー給水事業会社の経営分析―
唐澤 達之
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 38 巻 p. 66-87

詳細
抄録

近世ロンドンにおいて、給水事業は都市自治体から私的な事業会社の手に委ねられていった。本稿は、この給水システムの転換の意義と、そこから浮かび上がってくるロンドンの都市社会の水問題への対応のあり方の特質を検討することを課題とする。この課題に取り組むために、18世紀ロンドンの一給水事業会社であるチェルシー給水事業会社を取り上げ、当社の理事会議事録と会計記録を主たる史料として、給水システムの転換を可能にした種々の要因(資本の調達、労働力の調達、技術革新、市場、経営組織、諸ステークホルダー間の関係)がいかに相互に有機的に結びつけられたのかを実証的に明らかにした。そして、当社の給水事業には、ウェストミンスタの富裕層が主たる出資者及び経営者となって自らが居住する地区における都市開発や雇用創出による社会的安定を目指す、というローカルで共同体的な利害が反映されていたことが重要な論点として導かれる。

著者関連情報
© 2019 比較都市史研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top