抄録
日本では、2006年に特定の猶予品を除き、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するすべての物の製造、輸入等が禁じられたが、既存施設の継続使用、建物改修等では、現在も石綿曝露がありうる。本論文の目的は、ある学校において広く使われていたひる石吹付け材由来の石綿曝露防止対策の経験を紹介すること、ならびにそれに基づく石綿曝露リスク管理方式を提案することである。この学校のひる石吹付け材の石綿含有が透過型分析電子顕微鏡で初めて確認されたのは2005年である。以後、安全衛生委員会の審議に基づき、石綿に対する法規制の強化とひる石吹付け材に含まれる少量の石綿の分析方法の改良の中で、一連の対策を進めてきた。それらの対策としては、X線回折による石綿含有の有無の分析、吹付け材の劣化・剥離状況の巡視、気中石綿濃度の測定、部屋ごとの管理方針の決定、吹付け材の剥落が顕著な部屋の使用中止、および吹付け材の撤去がある。この学校における吹付け材対策は、今後、他の学校や機関で対策を実施する際に参考になると考える。