抄録
1. はじめに
地球温暖化によって日々の天気パターンがどのように変化するかを明らかにすることを最終目的として,地上気圧の分布パターンの客観分類を行う一連の研究を進めている。第1報では,東アジア域における過去10年間の午前9時の海面気圧データを用いた手法の構築を行い,従来の天気図分類パターンとの比較から冬季における手法の妥当性を検証した(加藤ほか,2009)。第2報では,この方法を過去30年間の6時間データ(10958日)に拡張して詳細な寒候季の地上気圧分布パターンの分類を行った(加藤ほか,2010)。本報告では,まだ行われていなかった暖候季の分類に関して検討を行う。
2. データおよび手法
加藤ほか(2009)に従い,1979年から2008年の東アジア域(北緯20から52.5度,東経110から160度)における,水平解像度2.5度×2.5度の午前9時の海面気圧データ(NCEP/NCAR再解析データ)を用いた.海面気圧データに対し主成分分析を行い,第1から第6主成分までの主成分スコアに対する6次元空間内で10958日の群平均法を用いたクラスター分析を行った。クラスター分析に関しては,50グループに分類した。その中で,暖候季(6648日)に出現するパターンについて調べた。
3. 結果
暖候季においてクラスター分析の結果,7グループに大別した(図1)。まず_I_型・_II_型・_III_型と分かれ,つぎに_I_型と_II_型がそれぞれ3グループずつに細分化された。その中から,代表的な2グループ(_I_a型,_II_a型)の平均パターン分布について図2に示し,それらの月別出現頻度について図3に示す。
_I_a型は,6月から8月に出現する頻度が高い。このグループは,第1主成分が卓越するという特徴を持つ。この平均パターン分布は,日本の南海上にリッジを持ち,朝鮮半島の北側に低圧部を示す。このグループは3756日のメンバーを含んでおり,さらに細分化した結果,夏型や梅雨期に見られるいくつかのパターンに分かれることが明らかになった.
また_II_a型は,3月から4月と9月から10月に出現する頻度が高い。このグループは,第2主成分が負の値を示す傾向にある。この平均パターン分布は,北高南低の気圧配置パターンを示す。