環境と安全
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原著論文
京都における環境中過塩素酸塩の動態と農作物などへの影響
山田 悦浅野 広樹布施 泰朗
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2012 年 3 巻 2 号 p. 2_97-2_104

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抄録

   環境試料中の微量過塩素酸イオンの測定法として開発したサプレッサー型イオンクロマトグラフ装置を用い、大気環境及び水環境中における過塩素酸塩の動態解析を行い、土壌や農作物への影響についても検討した。2007年から2009年の京都市における雨水中過塩素酸イオンの濃度範囲はN.D.~3.53 μg/L、平均濃度は0.72±0.70 μg/L(n = 41)であった。大気エアロゾル中過塩素酸塩の濃度範囲は0.02~9.64 ng/m3、平均濃度は0.62±1.32 ng/m3(n = 132)で、2~4月に高いという季節変化を示し、バックトラジェクトリ解析より中国大陸からの汚染物質の長距離輸送の影響が推測できた。近畿における淀川水系河川水、水道水及び地下水中過塩素酸イオンの濃度は、いずれもアメリカマサチューセッツ州の飲料水基準(2μgg/L)より低く、人間の健康に安全なレベルであった。野菜中の過塩素酸イオン濃度は、レタス、キャベツなど可食部が葉菜の野菜中に比較的高く検出された。2009年測定の京都産牛乳中過塩素酸イオン濃度の平均値は22.6±7.61 μg/Lと2005年の値より高かった。雨や大気エアロゾルにより負荷された過塩素酸塩が農作物の葉などに濃縮し、間接的に牛乳の濃度に影響したと考えられる。

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© 2012 大学等環境安全協議会
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