2016 年 7 巻 3 号 p. 205-211
本研究では、化学実験室で起こる火災に係るリスク認知および防火知識に関して、化学系学科の学部1年生、3年生、および大学院生に対して質問紙調査を行い、学年による差異を統計学的に検討した。その結果、学年に関わらず多くの学生が、化学実験室火災に対して強い恐怖感を持っていることが分かった。火災による被害の要因として炎を挙げた者は非常に多かったが、煙や有毒ガスを挙げられた者の比率は高くなく、かつ学年間でその比率に有意差は見られなかった。低学年の学生では、身近な防火設備の設置場所を把握している者の比率は極めて低かった。また、実験で使用している有機溶媒の引火点に係る知識では、高学年ほど実際の引火点により近い引火点を回答していたが、それでも全ての学年で、実際の引火点よりもかなり高く回答することが分かった。