抄録
本稿は、クロード・ドビュッシーの作曲手法に関し、初期のピアノ曲を中心に特徴的な書法を抽出してその特徴を述べ、それらを『前奏曲集第1巻』の『亜麻色の髪の乙女』と『パックの踊り』と比較し、書法的な発展の方向性を探るものである。その過程でドビュッシーが伝統的調性からどのように離れ、如何なる手法を通じて何を表現しようとしたのかについて考察する。また、この作曲家が様々な工夫を重ねる中で創出した「同じ響きを保持する平行和音」と「音数制限を伴う音組織」、複調性(多調性、多旋法性)に着目し、これらの手法が調性から遠ざかるにつれて失われていく表現領域を異なる次元において補填する役割を担ったことを明らかにする。