抄録
ドイツ帝政期の人気作家ヴィルヘルミーネ・ハイムブルクはほとんどの作品を、中小市民を主要購読者としていた『ガルテンラウベ』に発表し、同誌を代表する作家E・マルリットが亡くなると、その後継者と見なされるようになった。しかしハイムブルクの作品は、一見典型的なハッピーエンドを持ちながら、その醒めた表現や、登場人物たちの言葉には伝統的な市民階級の価値観とは合わない要素もあり、市民階級の理想を掲げたマルリットとは明らかに異なっている。本論文ではマルリットの死後の1890年代の3つの作品に見られるシンデレラ・モティーフ、「親密な家族」、「母役割」を中心に、ハイムブルク作品に表われた市民階級の価値観の揺らぎを検討する。