抄録
液性免疫を担う主たる分子である抗体は,高い特異性と親和性ゆえに,分析試薬,診断薬のみならず,医薬としても開発されている.すでにFDAに20品目以上認可されており,100品目以上臨床研究に入っているともされるが,効果が不充分であったり,生産コスト高が問題となっている.そこで,ヒトあるいはヒト型化された抗体断片を用いた,より高機能な組換え抗体の研究が広く進められるようになった.本稿では,特にリンパ球とがん細胞を標的とした二重特異性抗体に焦点を絞り,新規な抗体医薬としてのがん治療への応用と展望を解説した.