抄録
遺伝子組換えにより自己増殖能を欠失させるとともに,治療効果が期待される遺伝子を搭載した遺伝子導入ベクターや,腫瘍でのみ増殖することにより腫瘍を退縮させる制限増殖型ウイルスは,がんをはじめとする各種難治性疾患に対する新たな治療薬として注目を集めている.その遺伝子組換えの基本ストラテジーは“遺伝子発現効率(治療効果)を高める”とともに,“安全性を高める”ことである.
本稿では,組換えウイルスの安全性を高めるストラテジーとして,最近筆者らが研究を進めているマイクロRNAによる遺伝子発現制御機構を搭載した組換えアデノウイルスについて解説する.マイクロRNAによる遺伝子発現制御機構を利用することにより,治療遺伝子の発現や制限増殖型ウイルスの増殖を細胞特異的に制御することが可能となり,組換えアデノウイルスの安全性を大きく向上させることに成功した.