抄録
抗体医薬の研究が進むにつれ,その問題点も明らかにされてきている.これらの問題点は,抗体の基本構造に起因するものである.そこで,イムノグロブリン構造を利用せず,目的の標的タンパク質に対して特異的に結合する抗体様物質が求められている.筆者らは,抗体様物質としてヘリックス-ループ-ヘリックス構造をもつ分子標的ペプチドの開発を行った.分子進化工学の主要技術であるファージ表層提示ライブラリー法を駆使し,立体構造規制ペプチドライブラリーから標的タンパク質に結合するペプチドをスクリーニングする.得られるペプチドは,強固な立体構造をもつため生体内の酵素分解に対しても安定であり,低分子量(分子量:3000~5000)であるにもかかわらず抗体と同等の高い結合活性をもつ.このことから「マイクロ抗体」と名付けた.