抄録
温度や光、磁力など様々な外部刺激に応答する材料が、DDS担体として広く利用されている。これらはDDS概念の具現化に極めて有用である一方で、実現に際してはインフラ整備などが課題になることがある。本稿では、人の手で与える力のみで薬物放出を行うゲルを紹介する。担体ゲル素材は、アルギン酸カルシウムを、シクロデキストリンで架橋することにより合成した。これにモデル薬物として制吐剤のオンダンセトロンを取り込ませ、人の押す力を模倣した刺激を与えると、それに応じて薬物放出が起こることが確認された。本システムはQOLの向上に貢献するだけでなく、インフラ整備が不可能な発展途上国や、ライフラインが途絶えた災害時などでも利用が可能な、新しい薬物投与法として期待される。