Drug Delivery System
Online ISSN : 1881-2732
Print ISSN : 0913-5006
ISSN-L : 0913-5006
28 巻, 2 号
3月
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集“新しいDDSを切り拓く機能性材料の開発”編集:川上亘作
  • 井澤 浩則, 川上 亘作, 有賀 克彦
    2013 年 28 巻 2 号 p. 92-98
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル フリー
    温度や光、磁力など様々な外部刺激に応答する材料が、DDS担体として広く利用されている。これらはDDS概念の具現化に極めて有用である一方で、実現に際してはインフラ整備などが課題になることがある。本稿では、人の手で与える力のみで薬物放出を行うゲルを紹介する。担体ゲル素材は、アルギン酸カルシウムを、シクロデキストリンで架橋することにより合成した。これにモデル薬物として制吐剤のオンダンセトロンを取り込ませ、人の押す力を模倣した刺激を与えると、それに応じて薬物放出が起こることが確認された。本システムはQOLの向上に貢献するだけでなく、インフラ整備が不可能な発展途上国や、ライフラインが途絶えた災害時などでも利用が可能な、新しい薬物投与法として期待される。
  • 本山 敬一, 東 大志, 有馬 英俊
    2013 年 28 巻 2 号 p. 99-108
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル フリー
    葉酸レセプター (FR-α) は各種上皮がん細胞で過剰発現しているため、葉酸 (FA) は、がん細胞標的リガンドとして汎用されている。そこで本研究では、抗がん剤としての応用が期待されているメチル-β-シクロデキストリン (M-β-CyD) に腫瘍細胞選択性を付与するため、FA 修飾 M-β-CyD (FA-M-β-CyD) を調製し、その有用性を検討した。FA-M-β-CyD は FR-αを介して細胞内に取り込まれ、優れた抗腫瘍活性を示した。さらに、FA-M-β-CyD はアポトーシスではなく、オートファジーを誘導することが示唆された。担がんマウスの静脈内に FA-M-β-CyD を単回投与したところ、腫瘍の成長が有意に抑制され、生存率が著しく改善された。これらの結果より、FA-M-β-CyD は腫瘍選択的抗がん剤として有用であることが示唆された。
  • 佐久間 信至, 日渡 謙一郎
    2013 年 28 巻 2 号 p. 109-118
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル フリー
    アルギニンなどの塩基性アミノ酸を多く含む10残基程度のカチオン性オリゴペプチドは、マクロピノサイトーシスにより細胞内に取り込まれる。著者らは、同ペプチドを側鎖に化学結合させたカチオン性オリゴペプチド固定化高分子を設計・合成し、『低膜透過性分子と混合して生体膜上に適用するだけで、膜上に留まる同高分子により繰り返し誘導されるマクロピノサイトーシスを介して、共存する低膜透過性分子のみの膜透過が促進される』ユニークな機構に基づく膜透過促進剤として同高分子の開発を進めている。本項では、オリゴアルギニン固定化高分子の膜透過促進作用及び同機構について、D-オクタアルギニン固定化高分子を中心に検証した結果を報告する。
  • 松元 亮, 石井 武彦, 片岡 一則, 宮原 裕二
    2013 年 28 巻 2 号 p. 119-126
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル フリー
    今日、インスリン依存型糖尿病の対症療法としては、患者自身によるインスリン頻回注射がもっとも一般的である。しかしながら、この方法は、患者の生活の質(QOL: Quality of Life)を著しく損なううえ、正確な用量設定も困難であり、長期的な血糖値管理の目的を満足するものではない。このような背景から、グルコースオキシダーゼやレクチンを利用して自律型(フィードバック型)のインスリン供給システム、いわば“人工膵臓”を工学的につくる試みが多くなされてきた。ところが、これらタンパク質由来の物質は、変性や細胞毒性のために長期使用や保管が困難であり、いずれも実用には至っていない。本稿では、合成分子を組み上げて得られる「ボロン酸ゲル」を用いてこれを代替する筆者らの取り組みを中心に概説する。
  • 原 雄介
    2013 年 28 巻 2 号 p. 127-134
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル フリー
    自励振動アクチュエータは、心筋細胞のように外部刺激によらず自励駆動する時空間機能を有したソフトマテリアルである。このような機能は、Belousov-Zhabotinsky(BZ)反応によって高分子鎖の溶存状態を周期的に変化させることによって発現している。化学反応を直接的に力学的なエネルギーに変換して駆動する自励振動アクチュエータは、外部電源および外部制御装置フリーで駆動することを特徴とする。本稿では、分子デザインを改良することで高機能化が進む自励振動アクチュエータを、ラボオンチップ等の微細空間で活躍するマイクロ流体素子(マイクロポンプ等)の動力源として機能させることを目指した研究の現状について紹介する。
  • 荏原 充宏, 齋藤 充弘
    2013 年 28 巻 2 号 p. 135-148
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/06/25
    ジャーナル フリー
    近年バイオマテリアルの研究分野において炎症・抗炎症などの生体反応を積極的に制御可能な新たな材料開発がみられるようになってきた。免疫応答をうまく制御することは、直接的に病気を治すという戦略だけでなく、従来の薬物治療の効果をより促進する戦略としても有用である。また、安価で合目的に設計された材料自身が生体機能に積極的に働きかけることができれば、現在の医療費を大幅に削減することが可能となる。本稿では、このような新たなバイオマテリアルの開発(immunobioengineering)に注目し、最近の研究例を概説する。
feedback
Top