抄録
システムズバイオロジーのアプローチを薬理学に適用したものがシステムズ薬理学だといえる。薬物の有効性や毒性を生命の複雑なシステムのなかで理解しようとするものである。薬物の分子作用を定式化し、生体への影響をシミュレートする研究が行われ、これにより薬物を生体に投与したときの効果を予測することが可能となりつつある。このような研究により得られた薬物作用のシステム論的理解は創薬や医療を変えるものであると期待される。本稿では、筆者らが実施しているイオンチャネル作用薬のシステム薬理学的研究を紹介し、その成果が不整脈の治療や薬物誘発性不整脈発生という副作用の理解にどのように繋がり、今後の創薬に貢献できるのか説明する。