抄録
一酸化窒素(NO)は、さまざまな生理機能を担うことが知られ、その作用はシグナル伝達系や酵素活性によって細かく制御されている。一方、NO自体は常温常圧でガス状の分子であり反応性が高く不安定な化学種であるため、取り扱いにくい物質である。このため、NOの生物作用研究には系中でNOを放出する化合物(NOドナー)が不可欠である。特に光照射により放出活性を制御できる化合物(ケージドNO)は、NO投与の場所とタイミングを任意に制御でき多様な検討が可能となる。これまでにいくつかのケージドNOが開発されてきたが、筆者らは独自のケージドNOの開発を行い、可視光および近赤外光によるNO放出が可能なケージドNOを開発し、生体応用を行った。