抄録
薬効の持続化や薬物への効率的な送達を可能とするDDS技術の1つに、薬物キャリアであるリポソームによるものがある。リポソームがターゲティング製剤として効果を発揮するためには、生体内にて異物として認識されることなく血中を滞留することが重要な因子であり、そのためにリポソームの膜表面に水和層を形成することが可能なPEG脂質が一般的に用いられている。本稿では異なるPEG脂質を組み合わせることにより変化するリポソーム膜表面の水和層の厚さと抗腫瘍効果の関係に焦点をあて、PEG修飾により得られるDDSキャリアとしてのリポソームのさまざまな特性に関する筆者らの研究を示すとともに、このストラテジーに基づいて合成した新規PEG脂質を紹介する。