抄録
経皮ワクチンとは、皮膚から抗原を投与することで体内の抗原特異的な免疫を誘導し、感染の予防や疾病治療を行うことを目的とした医薬品である。経皮ワクチンの構築には、皮膚の高いバリア層を乗り越えるDDS技術が必要であり、20年近くにわたる研究が行われてきた。本稿では、タンパク質やペプチドからなる抗原を油中にナノサイズで分散させるSolid-in-Oil(S/O)技術と、本手法を用いた経皮デリバリーや経皮ワクチンへの応用についてまとめた。最初にS/O製剤の成り立ちと、他のエマルション製剤と比較したときの特徴について解説し、インスリンをはじめとしたタンパク質製剤の経皮デリバリーの研究について紹介する。続いて、現在までに行われてきた経皮ワクチンについて他の研究についても概観し、S/O製剤を用いた経皮ワクチンのモデル抗原による基礎的検討、ならびに、実際の予防や治療効果について最新の研究を紹介する。