抄録
“内なる外”と呼ばれる粘膜組織は絶えず外来因子に暴露されており、多くの病原体の侵入経路となっている。病原体が引き起こす感染症に対する予防法として有効なのがワクチンである。特に近年実用化されてきている「吸う・飲む」といった方法でワクチン接種を行う粘膜ワクチンは、従来行われてきた注射型ワクチンと異なり粘膜面にも免疫応答を誘導できることから、粘膜を介し感染する病原体に対して極めて有効である。現在、効果的な粘膜免疫応答を誘導するためにワクチンを適切な場所に送達し、ワクチン効果を増強しようとするワクチンデリバリーの開発が盛んに行われている。本稿ではワクチンデリバリーシステムを基盤とした粘膜ワクチン開発に関して、筆者らが得ている知見も交えて紹介したい。