抄録
EPR効果の発見により、ナノ粒子を用いて抗がん剤を送達する戦略を基盤としたナノ粒子製剤の開発が大きな進展を見せた。しかしながら、近年のドキソルビシン封入リポソームの複数の臨床試験のメタ解析の結果から、ヒトにおいて統計学的に有意な治療効果が認められないことが報告された。今回はこの報告について紹介する。また、ナノ粒子への腫瘍送達に与える腫瘍微小環境の影響の評価と送達効率の向上のために、筆者らは最近、血管へのsiRNA送達による微小環境リモデリングに基づくナノ粒子送達戦略を提唱している。本稿では、これまでに得られた血管正常化とナノ粒子送達効率の関係性について概説したい。