Drug Delivery System
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特集 “中枢神経疾患に対するDDSのトランスレーショナルリサーチ”  編集:近藤昌夫
血液脳関門通過技術を用いたライソゾーム病治療薬の開発
薗田 啓之
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2019 年 34 巻 5 号 p. 368-373

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抄録
希少疾患とはその名のとおり患者数が少ない疾患を指し、日本では患者数が5万人未満の疾患と定義されている。その希少疾患の1つにライソゾーム病があり、50種類以上に分類される。ライソゾーム病は、細胞小器官の1つであるライソゾーム内の分解酵素の遺伝的欠損により引き起こされ、ライソゾーム内に大量の脂質あるいはムコ多糖などが蓄積し、肝臓や脾臓の腫大、骨変形、中枢神経障害など、さまざまな症状を呈する疾患群である。そのライソゾーム病の1つにハンター症候群があり、患者の多く(約7割)が中枢神経障害を呈する。現在は、欠損した酵素を体外から補充する「酵素補充療法」による治療が可能であるが、静脈内投与された酵素は血液脳関門を通過することができないため、神経症状に対する薬効は認められていない。筆者らは、独自の血液脳関門通過技術である「J-Brain Cargo®」を創出し、これを用いた新たなハンター症候群の治療酵素製剤JR-141を開発中である。今回は、モデルマウスやサルを用いた非臨床データに加えて、世界に先駆けて日本で実施したフェーズⅠ/Ⅱ臨床試験結果も紹介する。
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© 2019 日本DDS学会
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