抄録
末梢から脳への薬物輸送は血液脳関門により著しく制限されている。したがって認知症等の中枢疾患治療薬を開発するためには、脳への輸送障壁を突破する薬物送達法を構築しなければならない。そこで筆者らは、インスリンおよびGLP-1受容体作動薬等のペプチド薬物を新たな認知症治療候補薬物として用い、経鼻投与を介してそれら薬物を脳内に直接送達することを試みた。ペプチド薬物を細胞膜透過ペプチドと混合し経鼻投与することにより、鼻腔から脳への薬物輸送効率は飛躍的に増大した。さらに、本投与手法を介して脳に移行した薬物が、老化促進型認知症モデルマウスの認知機能障害を改善させることを明らかにした。本稿では、これらの研究成果を紹介する。