Drug Delivery System
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特集 “感染症に対するワクチン・抗体医薬におけるDDSの応用”  編集:吉岡靖雄
腸内細菌叢制御に向けた経口投与型抗体医薬の開発
新藏 礼子
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2022 年 37 巻 5 号 p. 395-401

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抄録
Dysbiosisは、健康な微生物叢と比較した微生物組成の変化であり、腸内微生物多様性の減少および微生物分類群の変化を特徴とする。腸内のdysbiosisはまた、炎症性腸疾患、結腸直腸がん、心血管疾患、肥満、糖尿病および多発性硬化症を含むさまざまな疾患の病因において重要な役割を果たすと提唱されている。腸の多量体免疫グロブリンA(IgA)抗体は、腸内微生物叢を調節するだけではなく、病原性細菌、インフルエンザやSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)などのウイルス感染を粘膜部位から排除するのに重要であることが、多くのエビデンスから示されている。1970年代以降、治療用IgAまたはIgGの経口投与試験が、主に病原性大腸菌またはディフィシル菌によって引き起こされる感染性腸炎を治療するために行われてきた。しかし、現在まで臨床応用として開発に成功したものはない。腸内病原体に対する防御機能に加えて、IgAは腸内共生微生物叢を調節して共生に導くことがよく知られているが、dysbiosisを治療するためのIgA治療薬の開発も進んでいない。本稿では、治療用IgA抗体の利点とその開発について議論する。
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© 2022 日本DDS学会
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