抄録
前田先生はタンパク質化学のエキスパートの立場から、がん治療だけでなく、がん予防、ウイルス・細菌感染症など、非常に幅広く研究を行い、多大な業績を残された。これらは、他の著書でも紹介されているので、本稿ではEPR効果に焦点をあてる。EPR効果はマウス実験腫瘍においては世界的に証明されたが、臨床の固形がんで、広く受け入れられていない事実を、長い間、前田先生と議論してきた。EPR効果を臨床においても確固たる理論にするために、前田先生はEPR効果のキーファクターである腫瘍血管透過性亢進の増強を図る戦略をとった。筆者はがん間質ターゲティング療法をEPR効果に加味する戦略をとった。前田先生と筆者は、固形がん治療にとっては、がん細胞と正常細胞の分子生物学的違いよりも、EPR効果で定義されるがん組織と正常組織の違いが、より重要であるという共通認識をもっていた。