Drug Delivery System
Online ISSN : 1881-2732
Print ISSN : 0913-5006
ISSN-L : 0913-5006
39 巻, 1 号
日本DDS学会
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
年頭にあたって
FOREWORD
OPINION
特集 “新たな挑戦の舞台へ!”  編集:長崎幸夫
  • 松村 保広
    2024 年39 巻1 号 p. 8-14
    発行日: 2024/01/25
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー
    前田先生はタンパク質化学のエキスパートの立場から、がん治療だけでなく、がん予防、ウイルス・細菌感染症など、非常に幅広く研究を行い、多大な業績を残された。これらは、他の著書でも紹介されているので、本稿ではEPR効果に焦点をあてる。EPR効果はマウス実験腫瘍においては世界的に証明されたが、臨床の固形がんで、広く受け入れられていない事実を、長い間、前田先生と議論してきた。EPR効果を臨床においても確固たる理論にするために、前田先生はEPR効果のキーファクターである腫瘍血管透過性亢進の増強を図る戦略をとった。筆者はがん間質ターゲティング療法をEPR効果に加味する戦略をとった。前田先生と筆者は、固形がん治療にとっては、がん細胞と正常細胞の分子生物学的違いよりも、EPR効果で定義されるがん組織と正常組織の違いが、より重要であるという共通認識をもっていた。
  • 山田 勇磨
    2024 年39 巻1 号 p. 15-22
    発行日: 2024/01/25
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー
    多彩な機能を有するミトコンドリアへ目的分子を送達するDrug Delivery System(DDS)は、医療・ライフサイエンス分野の発展に大きく貢献すると期待されている。一方で、ミトコンドリアに送達する分子の物性や大きさを制限するなど、多くの課題が山積していた。これらの課題を解決する戦略として、ナノ技術を駆使したDDS開発が注目されており、送達分子をミトコンドリアまで届けるナノDDS開発研究が進められている。本稿では、ミトコンドリアを標的とするナノDDSについて概説するとともに、筆者らが創製した「ミトコンドリアDDS“MITO-Porter”」に関する研究について紹介する。
  • 池田 豊, 長崎 幸夫
    2024 年39 巻1 号 p. 23-31
    発行日: 2024/01/25
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー
    近年、脳と腸が脳腸軸と呼ばれる伝達系を介して密に関連していることが明らかとなってきている。腸を良好な状態に保つことで脳腸軸を介して脳疾患への治療効果が期待され、多くのアプローチがなされているが、その腸内環境を改善するための手段としては、糞便移植やプロバイオティクス等に限られている。筆者らは腸環境を破壊する大きな原因の一つとして、腸内の酸化ストレスに着目し、腸内環境を酸化ストレスから保護することで、脳腸軸を介して脳機能にも保護効果をもたらす新しい治療戦略を目標に掲げた。そこで、腸選択的に滞留し、腸内酸化ストレスを消去する抗酸化ナノ粒子(siSMAPoTN)を設計し、慢性拘束うつ病モデルマウスに経口投与したところ、腸内環境を酸化ストレスから保護し、血中のストレスホルモン量やIL-6、さらには脳海馬中の神経栄養因子にも効果を示し、マウスうつ様症状を改善した。
  • 小石川 知生, 橋本 芳樹, 楠原 洋之
    2024 年39 巻1 号 p. 32-41
    発行日: 2024/01/25
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー
    薬物トランスポーターは、多様な薬物を基質として認識し、生体内において血中滞留性や組織分布の決定要因として重要な役割を果たす。本稿では、筆者らの研究成果も含めて、薬物トランスポーター研究に関して、分子論から臨床研究までを紹介する。①薬物トランスポーターの立体構造が解かれ、多様な化合物を基質として認識する機構や輸送駆動力に関する知見が得られた。②microphysiological system/complex in vitro systemの登場により、ヒト臓器機能を模倣したin vitroモデルの開発が進展した。③薬物トランスポーターの輸送活性を反映したバイオマーカーを利用することで、薬物相互作用研究など、薬物トランスポーターの輸送活性の変動を評価することが可能となった。
  • 星野 友
    2024 年39 巻1 号 p. 42-52
    発行日: 2024/01/25
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー
    標的分子を強く特異的に認識し、結合することで、標的の機能を中和する高分子を汎用モノマーの重合プロセスで生産できれば、抗体の安定で安価代替“プラスチック抗体”として、医療、診断、生体分子生産プロセス、研究試薬等に応用できる可能性がある。本稿では、酵素や熱・酸・塩基に耐性があり、かつ安価なアクリルアミド誘導体を主原料としたプラスチック抗体の実現に向けた試みを紹介する。
  • 佐々木 茂貴, 村瀬 裕貴
    2024 年39 巻1 号 p. 53-62
    発行日: 2024/01/25
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー
    二本鎖DNAに蓄積された遺伝情報は、mRNAに転写され、タンパク質に翻訳され機能を発現する。核酸医薬は、核酸に直接作用するモダリティとして難病治療薬として開発が進んでいる。近年、タンパク質をコードしないncRNA、核酸の高次構造、小さな化学修飾など、遺伝情報の発現を時空間的に制御しているさまざまな機構が明らかになり、これらを標的とする人工的機能分子の開発が進められている。本稿では、核酸医薬の話題と、遺伝子機能を人工的に操る人工機能分子について概観する。
DDS製品開発の最前線
  • 星野 優子, 谷口 靖人, 瀧 憲二, 阿部 貞浩
    2024 年39 巻1 号 p. 64-68
    発行日: 2024/01/25
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル フリー
     エヌジェンラは、「骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症」の効能・効果を有するはじめての長時間作用型成長ホルモン製剤であり、国内では2022年1月に承認を取得した。本剤は、ヒト成長ホルモンにヒト絨毛性性腺刺激ホルモンβサブユニットのC末端ペプチドを融合させることによって半減期を延長し、従来、連日投与が必要であった成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療において、週1回投与を可能とした画期的な医薬品である。投与頻度の低減により、患者および保護者・介護者の時間的・労力的・心理的負担の軽減、ならびに治療アドヒアランスの向上が期待される。本稿では、エヌジェンラの製剤の特徴、薬物動態および臨床成績について紹介する。
[若手研究者のひろば]
feedback
Top