抄録
本稿は、サステナビリティの推進状況についてのアンケート調査(食品製造業124社、食品小売業111社)の分析結果を報告する。両業種に共通して食品ロス削減や環境保全を最優先課題としている一方、食品製造業はサプライチェーン全体の持続可能性確保や国際的な制度整備に重点を置き、食品小売業は消費者や地域社会との信頼関係の強化を重視する傾向を示す。また、人材不足や資金制約は両業種に共通する課題であるが、食品製造業ではデータ整備や業界横断的な協働の不足、食品小売業では日常業務の多忙さと情報発信の効果測定の難しさが特有の課題である。さらに、食品製造業は「構造的・長期的効果」を、食品小売業は「即時的・外部的効果」を中心に成果を認識しており、この差異は業態特性に根差している。本検討は、食品産業におけるサステナビリティ戦略の立案において、業種ごとの特性を踏まえたアプローチの重要性を示している。バリューチェーン全体での連携強化と成果の可視化が今後の課題である。